国境なき医師団からの手紙

夜もすがら もの思ふ

昨日、国境なき医師団から寄付を募るレターが届きました。
実は、私の子供の頃の夢は国連か国境なき医師団に参加することでした。残念ながら、国連職員になることも、医師になることも叶いませんでしたが、彼らの活動には常に関心があり、ニュースで見る度に、尊敬の念を深めていました。

レターの内容は、医師として現地で経験したことを日本の皆さんに伝えたいというものでした。強い感銘を受けましたので、レターの一部を抜粋します。

日本に生まれていれば、この子たちはこんな目に遭わずにすんだ…

アフリカのコンゴ共和国での出来事

コンゴ共和国では、長く続く政情不安と貧国のために医療制度が崩壊しています。
「ある日、辺りが暗くなった頃に、男の人が子供を連れてきているという連絡がありました。病院に行ってみると、8歳ぐらいの女の子を抱えた、ボロボロに疲れ切ったお父さんが入口に立っていました。
「娘を助けてください…」
そう訴えると、男の人はその場にへたり込んでしまいました。痛みに苦しむ娘を抱えて、ジャングルの中を一週間も不眠不休で歩いてきたと言うのです。
グロリアちゃんというその女の子は、お腹がパンパンに膨れており、高熱も出ていました。盲腸が破裂して、腹膜炎になっていたのです。しかも、ここに来るまでに一週間もかかっています。一刻の猶予も許されませんでした。
「大丈夫、すぐ手術するから」
そう言ってお父さんを見ると、その表情がみるみる緩むのが分かりました。
「やっとドクターに会えた!」

幸い手術が間に合い、危険な状態にあったグロリアちゃんの命は助かりました。しかし、私たちの到着があと少しでも遅れていたら、手遅れになっていたでしょう。お父さんが飲まず食わずで一週間、背負ってきてくれたからこそ助けられた命です。親の愛は世界共通だ…。元気になって帰っていく二人を見送りながら、込み上げるものがありました。

南アフリカ、ブルンジでの出来事

ブルンジは政治的混乱が続いており、私たちの病院の周辺でも武力衝突が絶えませんでした。
ある日、中学生ぐらいの男の子が一人で病院へやってきました。名前をガエルくんと言いました。見ると、ガエルくんの左腕の肘から下が骨だけになっています。
「どうしてこんな大怪我を?お父さんやお母さんは?」
ガエルくんに訊ねると、ガエルくんの村はある日、突然、武装勢力に襲われ、皆殺しにされたと言いました。一人、生き残ったガエルくんはジャングルに逃げ込んだそうです。
「見つかったら殺される」
そう思ったガエルくんは、何日間もジャングルの中で息を潜めていました。その間、恐怖を紛らわすために指を噛み続けていたら、そこから細菌が入って手が腐ってしまったのです。
「あの病院へ行けば、無料で診察してもらえる」昔、誰かから聞いた朧気な記憶を頼りに、彼は一人で私たちの病院までやって来ました。よく生きて辿り着けたと思います。
しかし、そのままでは腕全体が腐って死んでしまいます。ガエルくんは手術を嫌がりましたが、何とか説得して、手術を受けてもらいました。彼は腕を失いましたが、命は助かりました。義手を作り、リハビリを行い、一ヶ月後、退院することができました。

イラク北部での出来事

イラクには、隣国のシリアから逃れてきた難民のためのキャンプがあります。冬には大変厳しい寒さが難民キャンプを襲います。
難民キャンプに暮らすカミーラさんとその家族は、小さなテントの中でぎゅうぎゅう詰めになって暮らしていました。彼らは暖をとるために支給された小さなヒーターに、粗悪な灯油を入れて使っていました。
ある日、その灯油ヒーターが爆発しました。現地で手に入る灯油は質が悪く、頻繁に爆発事後が起こります。カミーラさんはとっさに娘たちに覆い被さり、炎から娘たちを守りました。

病院に担ぎ込まれてきたとき、カミーラさんは背中全体に大やけどを負っており、既に虫の息でした。そのような状態でも、カミーラさんは「子供たちは大丈夫か?生きているか?」と何度も訊くのです。私たちが「子供は大丈夫。無傷だ」と答えると、カミーラさんは「よかった、よかった」と涙をこぼしました。
私たちの懸命の治療も虚しく、残念ながらカミーラさんは数日後に亡くなってしまいました。
「このような酷い環境でなければ、死なずにすんだのではないだろうか?」
日本に帰国した今も、賑やかな繁華街を歩いていると、ふとカミーラさんのことが思い出され、やるせない気持ちになります。日本では考えられないようなことが原因で、子供思いの優しいお母さんが命を落とし、幼い娘たちも母親を失ってしまいました。

一つでも多くの命を救いたい

医療制度が崩壊している地域では、私たちの病院が唯一の医療施設とうことも少なくありません。グロリアちゃんやガエルくんの命は何とか救うことができましたが、もっと多くの命を救うためには、もっと多くの医師や看護師、医療品が必要です。
グロリアちゃんやガエルくんのように過酷な状況で、命の危機に瀕している人達に、少しでも早く手を差し伸べ、少しでも近くにいられるように、国境なき医師団は努力しています。

私たちは政府や国際機関には頼らずに、一般の方々にご協力をお願いすることで活動を維持しています。私たちにはあなたの支援が必要です。

一般人の私たちにできること

国境なき医師団のレターを読んで、不覚にも泣きそうになってしまいました。(最近、益々、涙もろくなってしまいました。)
「彼らが日本に生まれていれば、こんな目には遭わなかっただろう」。そう思うとやるせない気持ちになると、国境なき医師団の村上大樹さんは語っています。
彼らはたまたま厳しい環境に生まれ落ちてしまっただけ。私たちはたまたま平和な国に生まれてこられただけ。今、私たちが平和に暮らせているのは、ただ、ただラッキーだったからに過ぎません。コウノトリが私たちを落とす場所をちょっと間違えていたら、私たちも彼らと同じような目に遭っていたかもしれません。
もしも、自分が彼らと同じ目に遭ったら…その時、自分がして欲しいと思うことを、彼らにもしてあげたいと思います。私もできる範囲で、国境なき医師団の活動を支援しています。

国境なき医師団の村上大樹さん
国境なき医師団の外科医たち

上の写真は国境なき医師団の村上大樹さんのお写真です。今回、届いたレターを書いたのも村上さんで、レターに中にもお写真が載っていまいた。
他の方もブログに書いてしましたが、私も村上さんのお顔を見て信頼できる方だなと思い、寄付することに決めました。生き方って顔に出ますね。
「私の顔には、どんな生き様が出ているのかな?」村上さん達のお写真を見て、ふと、自分の顔が心配になりました。

難民映画祭

国連UNHCR協会では、今年も難民映画祭を開催する予定だそうです。
劇場でも、オンラインでも鑑賞可能です。ご興味のある方は、是非、チェックしてみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました